「孤独死」対策急務に…群馬

2011年10月29日 読売新聞

昨年410人10年で倍

 独り暮らしの高齢者が人知れず亡くなる「孤独死」への対策が県内で急務となっている。
 県警の検視を基にした2010年の孤独死は410人に上り、前回公表の08年(328人)から25%も増え、10年間では約2・4倍に増えた。高齢化が進む中、家族関係が希薄となり、高齢者が家族に見放されるケースも多くなっている。孤独死の実態把握が進まないことも課題で、危機感を強める市町村は取り組みを強化し始めた。

 桐生市で7月中旬、身寄りのない男性(67)が自宅で死後1週間以上たって見つかった。みどり市では6月下旬、熱中症で布団の上に倒れていた80歳代の女性が近所の通報で一命を取り留めた。市職員は「発見が遅れていたらと思うと怖い」と振り返る。

 「ある男性の葬式には民生委員だけが来て、家族は『関係ない』の一言だった」

 引き取り手のない遺体の葬式をあげているNPO法人「三松会」(館林市高根町)の塚田一晃さん(45)は嘆く。「性格の問題や借金で家族から縁を切られる高齢者が多くなった」のが特徴だという。今年の葬式は28日現在、208人に達し、過去最高となる見通しだ。男性が8割を占めている。

 県警が発表した「変死体として検視し、病死などと断定した独り暮らしの高齢者」の数を、社会的には「孤独死」ととらえている。だが、死者の詳しい境遇などは把握されていない。県介護高齢課によると、10年の独り暮らしの65歳以上の高齢者は4万8096人と、5年前に比べて約26%も増えた。

 こうした現状を受け、みどり市では9月、65歳以上の高齢者を対象に、郵便配達員が郵便物がたまるなどの異変を感じたら、市に通報してもらうようにした。桐生市と前橋市では、希望する独り暮らしの高齢者宅を週一回、市職員が訪問し、無料でごみを回収して安否を確認している。前橋市では9月末現在で246人が制度を利用しており、「予想の約2倍の申請数で需要は高い」と話す。

 高崎市は独り暮らしの高齢者に出掛けてもらおうと、市内15か所のビルなどに体操などを指導できる拠点を作る計画だ。NPO法人「孤独死ゼロ研究会」(千葉県松戸市)の中沢卓実理事長(77)は「お互いを頼りながら生活するような環境を作ることが必要だ」と指摘する。

 ただ、孤独死に関するデータは警察にしかなく、孤独死に関する明確な定義や全国的な統計も整備されていない。深刻さが浮き彫りにならないため、対策の遅れを招く要因とも指摘される。孤独死を研究する淑徳大学の結城康博准教授(42)は「定義が決まれば全国的な統計がまとまる。実態を把握できれば、危機感から対策を考える自治体も増えるだろう」と指摘する。

 ただ、その県警の「孤独死」に関する統計でさえも、県警捜査一課は「いわゆる『孤独死』とみられる遺体の数については、今後発表しない」という。理由については「全国の県警に合わせた」とのみ回答した。