地域の伴奏者へ、CATVの挑戦~ちゅぴCOMの地域密着の取り組み紹介

2024年01月01日中国新聞


 ケーブルテレビ(CATV)事業者の地域での存在感が増している。放送・通信・電話サービスを充実しながら、地域イベントの開催や自治体の課題解決を支援。営業会社を設立し、住民とのタッチポイントを広げる。ちゅピCOM(広島市中区)の地域密着の強みを生かした取り組みを追う。

暮らしの質向上へ模索 廿日市市・吉和でオンライン診療など実証実験

 広島県廿日市市は、オンラインで受診や行政相談などができる実証実験を2023年4月から5カ月間、吉和地域で実施した。過疎高齢化が進む地域の暮らしを、デジタル技術を活用して便利にする狙い。ちゅピCOMが事業を受託した。

 実験参加者は、家庭のテレビを使ってサービスを受けた。テレビに取り付けたウェブカメラを通して診療所や吉和支所と接続。高齢者や子どもの見守りも可能で、中国新聞文化センターの英語、脳トレ、イラスト講座にも双方向型で受講した。

 オンライン診療と問診には計49世帯が参加。「普段は高齢の親を車で診療所に送迎しているので助かる」「在宅で医師に相談できるので受診しやすくなる」との反応が寄せられた。ちゅピCOMは今後、住民ニーズに応じてデジタルと、これまで通りのやり方の長所を組み合わせたサービスの検討を続けていく方針だ。

 吉和地域は人口が600人を割り、65歳以上が過半数を占める。市は22年、地域デジタルトランスフォーメーション(DX)推進計画の一環で、生活の質の向上を図るための伴走事業者を公募。CATVの世帯普及率が8割を超すちゅピCOMを選んだ。

「宝」発信、盛り上げ一役 北広島町の全日本お米グランプリ

広島県北広島町のお米文化発信プロジェクトの一環で、食材をブレンドしてオリジナルのふりかけ作りに挑戦するワークショップ参加者(2023年9月)
 米栽培が盛んな広島県北広島町で2023年12月、全日本お米グランプリが開かれた。全国の生産者から277点が出品され、食べ比べや食味計を使って品質日本一を競い合った。

 大会の盛り上げに一役買ったのがちゅピCOMだ。町は23年、農業振興によるまちづくり将来ビジョン策定業務のプロポーザルを実施。同社は「町と伴走しながらCATVを活用して町民を巻き込む」ことを提案し、競合する2社を抑えて選ばれた。

 町には、国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産の「壬生(みぶ)の花田植(はなだうえ)」、神楽、美しい田園風景といった米文化にまつわるコンテンツは数多くある。だが、「そろっている『宝』をもっとアピールし、米どころとして地域をブランド化した方がいいのではないか」と同社メディア企画部の田頭良部長。発信手段としてテレビを活用するほか、自社で手がけている広告や交流サイト(SNS)、イメージキャラクターの起用を提案した。

 同時に町の現状と未来を考えるため、行政と民間企業、生産者、関係団体でコンソーシアムの設立を検討。町外へのPRと併せて1万7千人余りの町民に、町が県内有数の米どころであることの誇りを持ってもらおうと、8割が視聴できるコミュニティーチャンネルで、イベントの模様を紹介している。

 町は22年、町内のCATV事業をちゅピCOMに譲渡した。以後、同社は番組や動画制作、光回線網の整備、スマート農業などを通じ、地域密着の伴走者としてまちづくりに寄与している。

スーパーTVや電気まとめ割…エリア拡大、サービス充実

 ちゅピCOMは23年10月、広島県尾道市のちゅピCOMおのみちを合併して同社の「尾道局」とした。合併を機に尾道エリアで、音声でテレビ操作などができる高機能の「スーパーTV」や電気料金とのまとめ割サービスを開始している。

 山口県岩国市のアイ・キャンとは昨年11月、県をまたいで両社の通信ネットワークを接続し、通信の高速化や効率的配信を実現した。アイ・キャンの利用者は、インターネット上のデータを複製保存するちゅピCOMのキャッシュサーバーに接続できるようになり、従来よりも低遅延の環境でコンテンツを見られる。