日本生命など大手参入の陰で倒産増 IT化は介護業界の良薬ならず

2024年01月05日日経ビジネス


 日本生命保険が2023年11月末、介護最大手のニチイ学館を傘下に持つニチイホールディングス(HD)を投資ファンドの米ベインキャピタル系のファンドから約2100億円で買収すると発表したニュースは、業界関係者を驚かせた。

 介護業界には、15年12月に損保ジャパン日本興亜ホールディングス(現SOMPOホールディングス〔HD〕)が居酒屋大手のワタミから子会社、ワタミの介護を買収して本格参入。21年には投資ファンドのMBKパートナーズが介護大手、ツクイホールディングス(現ツクイ)を買収し、MBKは23年にもユニマットグループの介護事業者を傘下に収めている。

 これ以外にも教育事業の学研ホールディングスが04年から集合住宅に見守り機能を付けたサービス付き高齢者住宅(サ高住)などで展開を開始。同社は、18年には認知症患者向けのグループホームなどを展開するメディカル・ケア・サービスを買収するなど、近年、異業種大手の参入が続いている。

 相次ぐ大手参入の背景には、介護需要の大幅な増加がある。日生はニチイHD買収の狙いを「これまで当社は保険金の給付など金融面から顧客を支えてきた。時代が変わり、(生保の契約者が必要とする)介護などのサービスを受けられるようにするのも重要になってきた」(神村知幸・事業企画室長)と言う。日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上の比率)は22年で29%。既に世界一の高さであり、高齢者数は43年にピークを迎えるまで増え続け、高齢化率も50年には37%に達すると予想される。それだけに、介護事業は成長すると見られているのだ。

 だが一方で介護事業者の廃業や破綻は増え続けている。東京商工リサーチのまとめによると22年、介護事業者の休廃業・解散と倒産は計638件に上り、12年の3.6倍になっている。「中小事業者を中心に人手不足が深刻化している上、それに対応するためのIT(情報技術)化などの投資も大きい。23年は物価高も追い打ちをかけて事業継続を諦めたり、破綻したりするケースが増えた」と東京商工リサーチの後藤賢治・情報部課長は指摘する。市場として見れば拡大が続くものの、経営環境は厳しくなっているのである。