65歳以上も大歓迎!高齢者でも借りられる常識破りの不動産会社

2019年01月24日DIAMOND online

 
 超高齢社会を迎えて、65歳以上のシニア層が急増している。65歳以上の人口は3515万2000人、割合は27.7%で過去最高である(2017年総務省統計局調査)。

 高齢者を取り巻く問題はいろいろあるが、大きな課題となっているのが「住まい」。持ち家があればいいが、賃貸に住んでいる場合は、物件の老朽化や再開発などで退去を迫られるケースが少なくない。

 新しく住まいを借りようとしても、高齢者は敬遠されてしまうのが現状である。家賃をきちんと払ってもらえるのか、病気を抱えていないか、といった不安をどうしても貸主は持ってしまう。

 そんな中、あえて高齢者向けの住まいを紹介する不動産会社が誕生して、話題を集めている。

 R65不動産は、文字通り65歳以上の人を対象にした不動産会社だ。高齢者のために、希望する条件に沿った住まいを提供しようとがんばっている。

 例えば、ペットOK、保証人不要、駅から500メートル以内、病院が近い、家賃が安い、2人以上での入居が可能――など、多様な条件から選ぶことができるとあって、入居希望者が急増中。現在、月に約40件の入居相談を受けている。

 このR65不動産を始めたのは、山本遼さんという28歳の若き起業家。株式会社R65代表取締役として、8人のスタッフとともに忙しい毎日を送っている。なぜ「高齢者専用」に取り組むようになったのか?

 大学卒業後、一般の不動産会社に入社した山本さんは、そこで出会った1人の高齢者が起業のきっかけになったという。

「入社3年目に80代の女性の方を担当したのですが、ご相談を受けた時点で、すでに5社から断られていた状態でした。他の不動産会社や大家さんに何度も交渉して、ようやく見つけることができたのですが…。この体験を通して、高齢者だからという理由だけで住まいが見つからない、生活の場を持てない、という現実を目の当たりにしました。将来、自分が高齢者になったとき、こういう状態では困ると考え、起業を決意したのです」(山本さん、以下同)

入居者を見守る仕組みや入居者死亡の場合の保険も

「大家さんが高齢者の入居を敬遠するのは、孤独死を心配してのことです。万一、孤独死をされてしまうと、次に貸すのが難しくなるだけではなく、原状回復への金銭的な負担も強いられます。それを嫌がっているのです」

 実際に東京都では、1人暮らしの高齢者が自宅で死亡するケースが、ここ15年の間に2倍に増えている(内閣府の調査)。そのため、大家が高齢者を敬遠してしまうのだ。

 こういった課題を解決しようと、R65不動産は、大家に向けてさまざまな工夫をしている。まずは、入居者を見守る「R65あんしんパック」。これは高齢者の暮らしを見守る機器と、賃貸住宅管理利用保険をセットにしたプランである。見守りサービスは、AIが電気の使用量を感知することにより入居者の状態を把握できるサービスになっている。電気を切り替えるだけで、面倒な工事は必要ない。

 賃貸住宅管理利用保険は、万が一、入居者が死亡した場合、家賃と原状回復の費用を保証する保険である(限度額あり)。2つのサービスをセットにして料金は月額600円から。個別での加入も可能である。

 また、大家を対象とした勉強会も定期的に開催している。

「高齢者が入居して困ったケースやその対策法、逆に良かった事例を紹介しあうことで、大家さんも現状を知ることができます。大家さん同士が交流することで、もっと高齢者が入居しやすい物件が増えてほしいと考えています」

デメリットだけじゃない!高齢者入居のメリットもある

 その一方、人口減少にともなって、賃貸物件自体の入居希望者が減っている現状もある。全国各地に空き物件も多くなっている。そこに高齢者が入居するメリットは多々あると山本さんは話す。

「例えば、立地の悪い物件は一般には人気が低いのですが、高齢の方は職場へ通勤することが少ないので、駅から遠くても大丈夫なんです。バス停が近くにあれば喜ばれます。また、日当たりが悪いといった理由で、1階の部屋が埋まらない物件も見られますが、高齢者は階段の上り下りが負担になるので、むしろ1階を希望する人が多い。築年数が古い物件も同様で、高齢の方は昔ながらの落ち着いた部屋を好む人が多いと感じています」

 その他、若い世代に比べてマナーが良く、入居者同士のトラブルになりにくい、長く住んでくれるなどのメリットもあるという。

 R65不動産は現在、首都圏のみの展開だが、今後は全国に広がっていってほしいと願っている。

「他の不動産会社さんと連携して、ぜひ一緒にやりたいと考えています」

 早く高齢者向けの不動産が全国に広まることを期待したいが、首都圏以外にお住まいの方には、こんな制度も利用できる。2017年施行された「住宅セーフティネット制度」は高齢者だけでなく低所得者、障がい者、子育て世帯などの住まい探しを支援する制度である。自治体ごとに、入居可能な物件をデータベースで紹介しており、条件を入力すれば適した物件が紹介される仕組みだ。また、各市町村のホームページにも検索ページを設けている場合が多い。住まい探しでお困りの方は、一度利用してみてはいかがだろうか。