兵庫)ラインで高齢者ら安否確認、伊丹市が全国初の事業

2019年06月6日朝日新聞

 
 兵庫県伊丹市は、災害時に無料通信アプリ「LINE」を利用して高齢者や障害者の安否確認をする、全国初のモデル事業に取り組む。安否確認の効率化で、市職員らの限られたマンパワーをより必要な支援に向けようという試みだ。

 5月末、職員45人や内閣府の研究開発チームが参加し、市防災センターで実証実験があった。想定は昨年9月にあった台風21号。

 「市内に災害が発生しました。停電は大丈夫ですか」「現在はどちらにいますか」

 お年寄りや障害者の役になった職員のスマートフォンに、いっせいにLINEで連絡が届いた。安否確認システムとは事前の「友だち」登録でつながっている。

 健康状態、避難場所、名前など、LINEの問いかけに、スマホの画面をタッチして回答すると、防災センターのパソコン上には、回答結果を集約した一覧表が自動的に現れた。

 東日本大震災を教訓に国は2013年、災害対策基本法を改正。避難の時に介助が必要な高齢者や障害者らの名簿を、市町村に作るよう義務づけた。

 だが、名簿はできても、実際の安否確認や避難につなげるのは簡単でない。

 台風21号で伊丹市では大規模停電(2万5千軒、約1週間)が起きた。市は改正法が施行されて初めて、要支援者の安否確認を実施。職員のべ78人が1日半かけ、約2千人に電話したが、4割がつながらなかった。お年寄りらは固定電話の登録が多く、留守や避難済みなどで連絡がとれないケースが多かったようだ。

 これに対処するため、国の研究機関がLINEの協力で開発している「LINE防災チャットボット」というシステムの活用を国側に提案した。LINEを通じて避難状況、体調、必要な支援などを、「友だち」登録した人に自動的に尋ね、回答を集約する仕組みだ。

 実用化されれば、電話による安否確認の対象者が減り、職員はより緊急度の高い支援にあたれる。本人がスマホを使わなくても、あらかじめ家族や介護者が代わりに「友だち」登録することもできる。市は年内に登録案内を始める方向だ。

 実験をした市危機管理室の職員は「効率のよさを実感した。結果的に一人でも多くの人を救うことが出来る」。藤原保幸市長は「大災害時、限られた人員でどう対処するのか。今回の実験を検証してフィードバックできれば、全国どこでも使えて有意義なものになる」と期待を込めた。